

特別講演
大渕 修一 先生(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 研究部長)
「ウェアラブルデバイスを用いた行動変容とフレイル予防」
本講演では、東京都健康長寿医療センター研究所で実施している長期縦断研究「板橋お達者
健診」で蓄積されてきた高齢者のフレイル予防研究を出発点に、ウェアラブルデバイスが拓く新しい地域保健の可能性を紹介したいと考えています。高齢者の生活機能低下は、老年症候群を背景にしているが、中でも歩行機能の寄与が大きい。われわれは、スマートフォンのGPSをもちい日常的な歩行速度(以下、日常歩行速度)を計測するシステムを開発し、日常歩行速度は健診会場での歩行速度計測より、要介護や死亡のリスク判定に有用であることを示した。近年は、1500名の高齢者の3年間のライフログ収集と年1回の包括的高齢者健診を組み合わせたSwing-Japan研究を行い、歩行、活動、睡眠、心拍、会話の特徴量解析から、フレイルの発症や回復に関わる生活パターンが少しずつ見え始めている。現在、無作為化比較対照試験に着手したところであり、予防効果が確立された段階でではないが、日々の小さな変化を捉え、行動変容とフレイル予防につなげる未来を展望したい。

小島 光洋 先生(弘前大学大学院医学研究科社会医学講座 学部長講師)
「ワークショップ -保健活動のための事例検討会の持ち方-」
事例検討の必要性を疑う方はほとんどいらっしゃらないことと思います。しかし、実際に事例検討を行おうとすると、私たちは言いようのない重苦しさを感じます。その最大のものが準備の大変さです。どう準備したらよいかを考え悩みます。事例の見通しに不透明さを感じれば感じるほど、準備の大変さは大きくなるようです。このような事例こそ検討しなければならないはずなのに…… もしかすると、事例検討にはきちんと整理された資料を用意しておかなければならないと考えてはいないでしょうか。確かに研修会などで触れる事例検討はそのように設定されています。しかし事例検討には様々な段階があるはずです。研修会に出てくる事例は、ある程度整理されてきたものをさらに深めようとする段階の事例や、すでにいくつかの対応方針が見えてきてそれらを絞り込む段階の事例が多いように思います。 しかし、このようなまとまった形になるまでに事例は何回も検討されているはずです。資料としてとてもまとめられない混沌とした状態から、検討を重ねていくうちに資料にできそうな形が見えて来るのではないでしょうか。所属する係の中で、あるいは仲間内で繰り広げられる小さな検討会です。 私たちのグループはこの過程が重要ではないかと考え、業務の中で困難と感じた事例を持ち寄って検討してきました。「事前資料は不要である」を原則にしています。さらに、技法的には、事例提供者が「私」を主語にした報告をする、すなわち提供者が「困難と感じる気持ちを自分に忠実に表現して」報告することを重視しました。つまり「事例が困難である」ことを報告するのではなく、「私が困難と感じる」ことを報告するのです。主語が変わったことで、検討は事例の中の原因探しではなく、提供者が事例とどのように関わるかを参加者全体で考える場となりました。 もう一つの工夫として、検討の枠としてジェノグラムを活用しています。ジェノグラムを下敷きにして出来事や経過を整理していくと、あたかも登場人物の相関図のように関係者の範囲や力動が明かされて事例の理解が進んでいくことを繰り返し経験しました。 「私が困難と感じる」ことを報告するのですから、若手・ベテランといった経験の差は問題になりません。過去に釈然としなかった出来事体験を振り返る検討も行いました。ある時には、その日の業務で頭が真っ白になった体験を整理することもありました。 事例検討には、「上手く行った/行かなかった」という評価はありません。そこで起こったことから何かが分かってくる、その「何か」を見つけようとする態度が最も重要だと考えています。 この体験を分かち合いたいという思いからワークショップを企画しました。「私が困っていること」から出発して事例を検討することの意味を一緒に考えませんか。
※ワークショップは事前申込制となっております(先着50人)。
※守秘義務のある方のみが参加できます。
